ダン郡で保健医療施設の建設開始 ネパール事務所 奥田鹿恵子

2020/07/16

ナマステ!サンチャイフヌフンチャ(お元気ですか)?
 
新型コロナウイルス感染症拡大予防措置の一環として、ネパールでは3月24日から全土ロックダウン(都市封鎖)が続いていましたが、6月中旬から第一段階の緩和措置が取られ、ようやく保健医療施設の建設工事に着手することができました。
 
事業地であるダン郡ガダワ地区(人口:4万3千人、面積:360㎢)内にある8つの区のうち、現在、ヘルスポスト(診療所)があるのは4つのみで、残り半分の区にはありません。「ヘルスポストまで歩いて2時間もかかって大変だから、妊産婦健診を受けない」「ヘルスポストはいつも患者で溢れていて、待ち時間が長い」など、広い面積や人口に対して、圧倒的に施設の数が不足している状況が、住民の保健医療サービスへのアクセスを阻む要因になっています。ダン郡ガダワ地区に限らず、ネパールの地方部ではよく見受けられるこのような状況に対し、ネパール政府は「1区1棟」を整備する方針を表明しており、AMDA-MINDSもそれにあわせ、今年から来年にかけて、新たな保健医療施設8棟の建設を支援する予定です。
 
現在、建設しているのは、診察室や検査室の数が既存のヘルスポストよりも少ないCommunity Health Unit(CHU)と呼ばれる簡易診療所です。「1区1棟」の推進にあたり、新たに取り入れられた保健医療施設の規格です。
 
施工業者と事業で雇用したエンジニアの監督のもと、地元住民も工事に従事しています。今は雨期真っ只中で、作業を進めるのに困難も生じていますが、自分たちの村のためである上、新型コロナウイルスの影響で職を失った人が多いことから、建設には住民も特別な熱の入りようで、毎日朝から晩まで必死で働く地元住民の姿に私のやる気も高まります。
 

躯体工事の様子

 
各建設現場には7~11人の住民で構成される「建設モニタリング委員会」を設置し、エンジニアとともに建設の進捗状況と質を定期的に確認してもらっています。第1区カラカテ集落の建設モニタリング委員会の委員長で、かつ区長でもあるバブラム・アディカリさんは、事業開始前から「(簡易診療所の)建設はいつ始まるんだ」としきりに尋ねてくるなど、私たちに誰よりもアツイ要望を寄せてくれていました。今は毎日建設現場に足を運び、「鉄筋の質が気になるんだけど・・・」等、エンジニアへの電話でのホウレンソウ(報告・連絡・相談)も欠かしません。エンジニアの予測では、「カラカテ集落への道路は、雨によってそれほど悪化していないので、資材運搬に問題がないし、躯体工事も順調に進んでいるので、このペースで行くと11月には完成するだろう」とのこと。地元行政はすでに、この簡易診療所のスタッフとして、看護師と事務担当の2人を採用してくれており、関係者一同、完成を今から心待ちにしています。
 
着工式に参加する第1区長のバブラム・アディカリさん(右)

 
新型コロナウイルスが母子の健康にもたらす影響は世界中の懸念事項ですが、私たちの事業地においても、妊産婦健診や予防接種等の受診率が急激に低下し、対応の遅れが命を危険にさらし、保健医療サービスが一層行き届かない状況になっています。感染拡大が落ち着くとともに、徐々に回復するとは思いますが、私たちが目指すのは「元の状態」ではなく、「その先」です。簡易診療所の新設により、公的保健医療サービスがより身近なものになり、お母さんと子どもたちの健康と安全を守る環境が改善され続けていくようにならなければなりません。
 
今年5月、「ネパールのコロナ渦における保健医療体制の衰退により、この先6か月間で新たに4,000人の子どもの死を招く可能性がある」*、「ロックダウン中に妊産婦死亡率が200%上昇した」**との衝撃的なニュースが発表されました。コロナ禍の中、「新しい生活様式」ならぬ「新しい活動様式」によって事業を進めなければならない状況に、不安や焦りがないといえば嘘になりますが、AMDA-MINDSは「母子の健康格差是正事業」で掲げた目標を諦めず、行政による遠隔地での出張予防接種のサポートやラジオを通じた啓発等、新型コロナウイルスへの感染防止に努めながら、できる限りの活動を進めています。
 
スタッフ全員の知恵を振り絞って事業に取り組んでいきますので、引き続き応援のほど、どうぞ宜しくお願いします!
 
出張予防接種をサポートする事業スタッフ(左)

 
*国連児童基金(ユニセフ)による推計値
**ネパール保健人口省保健サービス局家庭福祉課による報告
 
 
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