安全な出産を推進するのは村人たち ミャンマー事務所 渡辺陽子

2019/09/26

マグウェ地域パウッ郡では、保健サービスが届きにくい地域を対象とした「安全な出産と新生児ケア推進プロジェクト」を実施しており、今年で3年目を迎えました。今回は活動の1つ、「村人への研修」についてお伝えしたいと思います。

対象地域の住民を対象に、これまでの2年間で妊娠や出産に関わる研修を計8回実施してきました。3年目となる今年は「産後ケア」をテーマに2回の研修を行ない、参加者は産後の過ごし方、産褥(さんじょく)婦や新生児に見られる異常症状、そして産後健診の重要性等について学びました。

産褥期・新生児期に「すべきこと・してはいけないこと」についてイラストが描かれたカードを用いてゲーム方式で楽しみながら学ぶ参加者

研修で重視しているのは知識の向上だけではありません。妊婦や産褥婦の周囲にいる人々の理解やサポートが得られるようになるための工夫にも力を入れています。村から最寄りの保健センターまでの距離が離れており、保健サービスへのアクセスが物理的に難しいだけでなく、出産時に家族が妊婦の腹部を強く押す等の不適切な対処法を行っている村人も多いという状況があるからです。妊婦・産褥婦の家族や周囲の村人が必要となるサポートの内容を理解し実践に移せるようになる事にも重点を置いているわけです。産後ケアを助産師から受けるため、産褥婦に対して「誰が」、「どのようなサポート」ができるか参加者自身が話し合う機会を設けています。

周囲からどのようなサポートが可能かアイデアを出す参加者

研修の後、家族によるこんなサポートの事例がありました。

アウンテイピンさん(男性)は、これまで研修で得た知識を息子とその妻(妊婦)に伝え、安全な出産のため助産師に介助してもらうよう勧めました。陣痛が始まった時、息子に地域補助保健センターまでバイクで助産師を迎えに行かせ、助産師の介助のもと無事に自宅出産を終えることができました。その後、助産師に連絡をとって予定を調整し、母子ともに助産師による産後ケアを受けることができました。

研修の受講者は、研修を受けてから行動に移すまでの間、どのようなことを感じたり、考えたりしているのでしょうか。チャッカン南村での産後ケア研修を例として紹介したいと思います。この日は計24人の村人(女性23人、男性1人)が参加していましたが、そのうちの一人、マクヌさん(女性)に話を聞いてみました。

研修会場にてマクヌさん(中央)に話を聞く渡辺(左)

マクヌさんはこれまで10回、すべての研修に参加しています。何が得られたかを聞いてみると、「単なる知識だけではなく、もしもの場合に使える情報、例えば妊娠・出産に関わる異常症状について知れたのが良かった」と話してくれました。また、「産後健診を受けるためには周囲のサポートが大切だと分かったので、まずはそのことを夫に伝えたい」と意欲を見せていました。

研修で得た知識をどのように役立てるかは参加者自身にかかっています。研修後、参加者が学んだ知識を他の村人や妊婦・産褥婦の家族等に伝え広げてもらえる事を期待しています。そのために、まず研修参加者が「産後ケアの大切さを〇〇さんに伝えたい」と思ってもらえるように研修を進めています。今回紹介したアウンテイピンさんやマクヌさんのような参加者が増えるよう、事業スタッフとともに活動を続けていきます。

産後の危険な症状についてカードを使って参加者に説明する事業スタッフ