「サポーティブ・スーパービジョンシステム強化プロジェクト」が終了します シエラレオネ事務所 松本千穂

2019/06/20

JICAからの業務委託を受けて、2013年5月からアスカ・ワールド・コンサルタント株式会社と共同で実施してきた、シエラレオネ国における「サポーティブ・スーパービジョンシステム強化プロジェクト」が、2019年7月に終了を迎えます。
 

ボンバリ県で課題解決策の一つとして実施された研修の様子を視察する筆者

 
シエラレオネは10年以上にわたった内戦の影響もあり、乳幼児死亡率、妊産婦死亡率ともに世界最低水準という状況が長く続いています。2010年以降、妊娠中・授乳中のお母さんと5歳未満の子どもには医療保健サービスを無料で提供する政策が採られてきました。この政策導入後、例えば診療所を利用する子どもの数は2.5倍にも増加しました。しかし、たとえ診療所があり、サービスが無料でも、提供される保健医療サービスが適切でなければ、助けられる命を救うことはできません。財源も人材も限られた中、それでも保健医療サービスを向上させるためには、保健衛生省の本省だけでなく各県の保健管理局も含め、働いている職員の能力を強化していくことが極めて重要、との問題認識に基づき立案されたのが、このプロジェクトでした。人材育成・能力強化には時間がかかるものですが、特に当プロジェクトの場合は、途中でエボラウイルス病の感染拡大により、現地における活動が17カ月間中断したり、プロジェクトを再開しても、保健衛生省幹部の顔ぶれが大幅に変わっていて、新たな関係構築に取り組まなければならなくなったりと、長い道のりでした。
 
県内のNGO等も招待し、現場訪問の結果を報告するポートロコ県のスーパーバイザー

 
しかし様々なチャレンジを乗り越え、活動を進めてきた結果、成果は確実に現れました。サポーティブ・スーパービジョンは、本省が県保健管理局に対して、県保健管理局が県内の診療所に対して現場訪問を行い、保健医療サービス提供に影響する課題を見つけた場合、それらを非難するのではなく、解決のために具体的に誰がどんな対策をとるべきか、一緒に考え、励まし、実行することを目的とした支援型の監督指導を指します。スーパーバイザー(監督役の職員)の多くが研修などを通じてこの考え方を理解し、現場で奮闘する職員を労い励ましながら訪問指導を行う姿が見られるようになりました。その研修も、当初は日本人スタッフが講師を務めていましたが、今ではそのノウハウを吸収した本省の中堅職員数名が、堂々たる講師ぶりを見せてくれています。更に、彼らから研修を受けた県保健管理局の職員の中にも、講師役として自県の同僚や部下に教えられるまでになった人もいます。今後、異動・退職に伴い新たにスーパーバイザーに指名される職員が参加する際も、彼らがしっかりと指導してくれることでしょう。
 
各県のスーパーバイザーを前に研修講師を務める保健衛生省のスーパーバイザー

 
県レベルでは、保健管理局が県議会や県内のNGO等にスーパービジョンの結果を共有し、解決策を実行するための協力を取り付けられるようにもなりました。課題解決のために必要な資源(物資、資金、研修講師となる人材など)が自分たちだけではとうてい賄いきれなくても諦めない。同じく保健医療サービスの向上を目指している関係者に積極的にアプローチする。こうして自ら提案した解決策が実現することでスーパーバイザーは自信を深め、また診療所スタッフも、サポーティブ・スーパービジョンが自分たちを手助けしてくれると実感できるようになりました。
 
訪問指導の結果をもとに援助団体が県保健管理局に提供した医療器具

 
とは言え、現場で見つけた課題・問題点の原因を正しく分析したうえで、現実的な解決策を提案することは、口で言うほど簡単ではありません。例えば、複数の原因が絡み合っている場合、その一つを取り除いても、まだ問題そのものは解決しない(もっと影響の大きな原因が取り除かれなければならない)ということもあるからです。注意深く状況を観察することで、問題の原因を把握・網羅し、説得力を持って解決策の実現に必要な関係者の協力を獲得していく。スーパーバイザーにはこれからも更なる研鑽を期待しています。