ハエ防止型トイレの設置を始めた村人の想い ミャンマー事務所 渡辺陽子 

2018/11/15

毎年11月19日は国連が定める「世界トイレデー」です。日本では、駅、商業施設、公共施設など、あらゆる場所にトイレがあり、ウォシュレット機能が備わっているものも珍しくないと思います。私たちが日常、何気なく使っているトイレ。しかし、世界では今なお、3人に1人にあたる23億人もの人が、トイレを使用できない状況におかれています。道端や草むらなどの屋外で用を足すことにより、排泄物に含まれる病原菌が人やハエ、川等などを介して人に感染し、下痢をはじめとする様々な病気を引き起こします。その結果、世界中で1日に800人以上の子どもたちが亡くなっています。

さて、今回はミャンマーにおける取り組みの一つをご紹介したいと思います。

中央乾燥地にあり、保健衛生の状況が劣悪なパウッ郡では、2017年より外務省の日本NGO連携無償資金協力事業として「マグウェ地域パウッ郡における安全な出産と新生児ケア推進プロジェクト」を実施しています。妊婦と子どもの健康状態を改善するためにも、地域全体の衛生環境の改善が大切です。ミャンマーにおける5歳未満児の主要疾患の一つに「下痢」がありますが 、その多くは予防可能なものです。

活動地では、トイレを使用せず野外排泄をしている世帯が約55%(1,084世帯中600世帯)もあるため、「ハエ防止型トイレ」の普及を推進しています。このトイレには、病原菌を媒介するハエが出入りしないよう、便器に蓋をするだけでなく、し尿は排水用パイプを通ってから汚物槽に溜めるようにし、通気口も高い位置に設けてカバーをするといった仕組みがあります。

ハエ防止型トイレの図面
ハエ防止型トイレの図面

不衛生な環境と下痢との関係を学ぶ村人
不衛生な環境と下痢との関係を学ぶ村人

ハエ防止型トイレの利用を促進する活動では、まず排泄物からどのように病原菌が運ばれ、人に感染するのかを学び、村人にトイレの必要性をよく理解してもらうことから始めます。そして、ハエ防止型トイレの仕組みを説明し、自分も設置しようと思ってもらえるようにするのですが、そのためのワークショップに参加したミンさん(47歳)に、話を聞いてみました。

「私は妻と子どもの3人で暮らしています。元々トイレはあったのですが、汚物がそのまま下に落ちる単純な仕組みで、たまるとひどい匂いがしていました。また、雨期になると土でできた汚物槽の壁が簡単に壊れてしまい、困っていたんです。そんな折、トイレについてのワークショップがあると聞き、参加してみました。そこでは、ハエ防止型トイレを使うことによって、下痢などの感染症を減らせるということを知りました。」

建設中のハエ防止型トイレの前で(Mg Myintさんの妻と孫娘)
建設中のハエ防止型トイレの前に立つミンさんの妻と孫娘

汚水槽のための穴を掘る村人
ハエ防止型トイレの建設は汚水槽のための穴を掘る作業から始まる

「もっと清潔で衛生的なトイレを自分の家でも使いたいと思い、ハエ防止型トイレの設置を希望しました。ワークショップから1ヵ月後に設置工事を開始し、まずは汚物槽のための穴を掘ることから取り組みました。そして、汚物槽の壁となるコンクリート製リングの設置、通気口のためのパイプの取り付け、トイレ用の小屋の枠組みと、作ってきました。あと、雨風を防ぐためにトタン屋根もつけようと考えています。ハエ防止型トイレを使うことで、家族がさらに健康に暮らせるようにしたい、と思っています。」

先月までにワークショップを終了した集落では現在、約63%(702世帯中439世帯)の世帯がハエ防止型トイレの設置に意欲を示しています。設置を希望した村人に対しては、セメントや便器など、資材の一部をプロジェクトから支援しますが、トイレ小屋は村人自身がデザインを考え、必要なものを準備します。そして、建設も村人自身の手で行われています。

配布されたセメントを家まで運ぶ村人
プロジェクトから配布されたセメントを家まで運ぶ村人

トイレ小屋のフレームとなる木材を組み立てる村人
トイレ小屋のフレームとなる木材を組み立てる村人

ハエ防止型トイレ普及を通じて衛生状態が改善し、予防可能な下痢性疾患で死亡する子どもが減ることを期待して、今後も取り組みを続けていきたいと思います。