歯を大切にしましょう~サン・ルカス市の挑戦
海外事業運営本部 林裕美

2023/09/15

みんなで並んで歯磨き練習。上手な子もぎこちない子もいます

皆さんは「8020運動」という言葉を聞いたことがありますか?「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
 
私がこの言葉を初めて聞いたのは随分前になりますが(1989年に提唱されたものだそうです)、80歳まで歯を残すのは難しいんだな、ちゃんとケアしないといけないんだな、、、と子ども心に思った記憶があります。その後も数十年にわたって歯に関する情報を耳にしてきています。中には、「歯の健康は全身の健康に影響する」などといった、びっくりするような知識もありました。
 
思い返せば、家ではもちろんのこと、保育園でも歯磨きを練習し、小学校では歯科検診が行われ、虫歯や親知らずが痛んだら歯医者へ行くなどしていました。日本人にとって、歯医者さんは身近な存在であり続けてきた、と言えるのではないでしょうか。
 
しかし、ホンジュラスの地方山間部に位置するエル・パライソ県サン・ルカス市は、日本とは様子が大きく異なっています。
サン・ルカス市に向かう道中の景色。でこぼこの山道を上ったり下ったりしてようやく到着します

まず、歯医者が身近にいません。歯科を受診したければ、車で3時間もかけて近隣の都市へ行かなければなりません。「それなら歯磨きをしっかりして、虫歯にならないようにしよう!」という気持ちを育てようにも、大人がそのような教育を受けてこなかったことから難しく、大人も子どもも、歯を健康に保つことが難しい状況にありました。
 
この状況を改善したいと考えたサン・ルカス市役所は、歯科診療室用のスペースと歯科医師まで確保していたのですが、肝心の歯科診療台や必要な機器を購入することができずにいました。
 
そんな中、テルモ生命科学振興財団の助成を受け、歯科診療室をついに開設することができたのです。サン・ルカス市と保健所の努力もあり、2023年6月には歯科診療台が設置され、歯科医師も配属されました。
サン・ルカス保健所に整備された歯科診療台

これまで市内にはなかった歯科の診療日には、患者が途切れることなく訪れ、順番を待たなければならないほどの盛況ぶりです。診療を担当しているカセレス医師は、次のように語ってくれました。
 
歯科診療室内で微笑むカセレス医師

「支援いただいた歯科診療機器は、ここでの診療に十分な機能をもっています。バッテリーがあり、停電時も安心して使えます。患者さんは、抜歯しなければならないほど重症の人が多いですね。14歳以下の患者には、全員フッ素を塗って、妊婦さんには健診の後は必ず歯科にも寄るように伝えています。新しいサービスということもあり、患者さんからお礼のフルーツやフリホーレス豆(インゲンマメ)をいただくこともあるんですよ」
 
プロジェクトでは、小学校低学年を対象にした口腔保健教室も実施しています。歯の健康の大切さを伝えた後、医師から正しい歯の磨き方を教わりながら、実際に練習し、最後にフッ素を塗布します。どの子どももフッ素塗布には顔をしかめますが、歯を磨いた後の爽快感が気持ちいいようで、笑顔がひときわ輝いて見えます。
 
小学校低学年の児童に、歯の健康について伝えるカセレス医師。子どもたちも興味津々です

1分間のフッ素塗布。60秒のカウントが長いんです

地域の歯の健康を守る大きな一歩を踏み出したサン・ルカス市。
大人も子どもも歯の健康を意識して歯磨き習慣を身につけ、ぜひ「8020」を目指してほしいと思います。
 

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この記事を書いたのは
林 裕美(はやし ひろみ)
海外事業運営本部 プログラムコーディネーター


1993年のカンボジア総選挙で、選挙監視の国連ボランティアとして活動していた日本人が現地で殺害された事件をきっかけに、国際協力に関心を持つ。大学卒業後、民間企業を経て2001年にAMDA海外事業本部(アムダマインズの前身)入職。カンボジアでのコミュニティ開発事業、インドネシアでの復興支援事業に従事後、2007年から現職。趣味のママさんバレー歴5年目にして、初のハーフ(中衛)センターポジションに四苦八苦。現在、猛特訓中!福岡県出身。

 

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