家庭菜園に取り組んだ5年を振り返って
ホンジュラス事務所 山田留美子

2022/10/24

ホンジュラス南東部のバド・アンチョ市という国内でも最も気候が厳しく(乾燥地域で気温が高く降雨量が少ない)貧しい市で、2017年から取り組んできた家庭菜園普及事業が、今年の6月に終了しました。
 
自家消費用のトウモロコシと豆を植えて細々と生活していた多くの住民にとって、ビタミンの源となる野菜・果物は高くて手が届かないので、「それなら各家庭で生産しよう」という話になったことが、この活動に取り組むきっかけでした。
 

バナナやパイナップル等が植えられた菜園で住民にインタビューする筆者(写真右)

 
傾斜地ばかりのこの地域では、地ならし、鶏ふん・牛ふん・落ち葉を集めての土壌づくりなどが重労働である上に、この5年間を振り返ると記録的な干ばつや台風被害などもありました。それでも水不足になる乾期には、多くの家庭が水場から何往復してでも菜園を維持しようとするなど、約460世帯が今も意欲的に家庭菜園に取り組んでいます。これはスタッフが、問題が生じる度に住民と一緒に解決方法を見出し、一人ひとりが収穫の喜びを経験することができたからこそです。
 
現地コーディネーターとして、また参加者のリーダーでもあり続けた現地協力団体GGUIA*のアントニオ・オセゲラさんに、プロジェクトを振り返ってもらいました。
 
農民青空学校で研修講師を務めるアントニオさん(写真中央)

 
「厳しい気候や、住民が援助慣れしてしまっているという条件があったにも関わらず、プロジェクトは成功だったと言えると思います。農家同士が学びあうための場として設置した農民青空学校は継続していますし、市場を実施するために結成した、環境にやさしい農業起業家組合は市長も交えて会合を続けています。
 
プロジェクトで個人の成長に焦点を当ててきたことが良かったのだと思います。つまり、物質的な援助は依存心を助長し、結局自分たちのためにならないこと、各個人が現状について深く分析し行動していくことによってのみ、生き方を向上できるということを住民に根気よく伝え続けたことが功を奏したのです。プロジェクトを通じて私たちスタッフと住民は多くの時間を共有し、ともに学んできました。プロジェクトがバド・アンチョに残した足跡は簡単に消えるものではないでしょう。
 
最後に私個人の今後についてですが、家族のため、化学物質をなるべく使わず健康に良い作物を作り、余ったものは売りつつ、生物の多様性を尊重した土と環境づくりの重要性や、そこから生まれる良いものを消費することを周りに勧めながら、自分自身も成長を続けていきたいと思っています」
 
貴重な水を保持しやすく虫も付きにくくなるように工夫された空中菜園

 
この5年にわたる取り組みに対する皆様のご支援、本当にありがとうございました。今やバド・アンチョ市民は自分たちの栄養だけでなく、市全体の経済や地球環境をよくしたいという意欲に満ちています。今後ともバド・アンチョの仲間たちを温かく見守っていただけると幸いです。
 
*GGUIA(グルーポギア)。環境に配慮し、有機肥料や自然の素材を使った除虫剤などを使いながら、家庭菜園を推進する活動に取り組む現地NGO。
 
 

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この記事を書いたのは

山田留美子(やまだるみこ)
ホンジュラス事務所 事業統括


大学生の時、初めての海外旅行先であるタイで手足のない物乞いを見て衝撃を受ける。同情を引くためにわざと四肢を切断されることもあると聞き更にショックを受け、途上国の実状に関心を持つように。大学卒業後、民間企業での金融業務、青年海外協力隊(南米ボリビアで野菜種子の市場調査)を経て、2011年にアムダマインズ入職。最近、YouTubeを見ながら運動することが新たな趣味に。岡山で過ごすお気に入りの時間は、岡山城周りの散歩と銭湯。東京都出身。

 
 

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