焦らず、一歩ずつ、一本ずつ 海外事業運営本部 田中一弘

2021/11/18

先日、英国グラスゴーで開催され、日本を含め世界中から多くの国や地域が参加したCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、森林破壊を2030年までに終わらせることが約束されました。こうした国際的な目標を定めることは重要ですが、定めただけでは何も解決しません。それぞれの国・地域、住民、国際機関、民間企業、NGOなどが着実に行動していくことが求められます。
 
マダガスカルも森林伐採による影響が大きい国の一つです。アムダマインズは2021年4月から、同国の中央高地に位置するツィアファヒ・コミューンにおいて、植林と環境に調和した農業の推進を通じて、持続可能な生計を実現するプロジェクトを進めています。
 
このプロジェクトで大事にしているのは、住民の思いやイニシアティブを大切にすることです。プロジェクトは期間、予算などの限られた枠組みの中で、期待した成果を挙げることが求められますが、一方で、それを優先するために無理に進めるのは逆効果です。昔から急いては事を仕損ずると言いますが、それはプロジェクトにも当てはまります。
 
本当の意味でその地域の住民自身がやるべき、やりたいと思ったことでないと、活動はうまくいきません。そこでプロジェクトでは、最初の住民との対話をじっくりと時間をとって行いました。この地域の環境はどういう状況にあるのか、それが住民の今後の生活にどのような影響を与えるのか。そして、環境と生活を改善していくにはどうすればいいのか。住民会合を重ねて話し合いました。
 

住民会合ではまず、プロジェクトスタッフ(中央奥)が地域の環境問題や生活への影響について問いを投げかけ、住民自身の気づきを促します。

 
その結果、ツィアファヒ・コミューンにある15村のうち、14村がプロジェクトとともに活動を実施していくことを決めました。残りの1村は、まだ考え中です。十人いれば十人の、十村あれば十村、それぞれの考え方があるのですから、当然でしょう。プロジェクトでは焦らず、そして無理に説得することはせず、引き続き、対話を続けているところです。
 
さて、現地では9月より、植林のための苗木づくりが住民によって進められています。プロジェクトを一緒に進めている現地NGO「CEMES(セメス)」のスタッフが、必要な技術支援を行っています。苗木づくりを実践形式で伝えるとともに、絵を多く使ったガイドを渡し、後からも自分のペースで見直しながら実施できるように工夫しています。土づくりから始め、苗床を整え、種を植え、水をやり、丁寧に作業を進めた結果、苗木は順調に育っています。この苗木への思いや愛情が、表情から伝わってくるようです。
 
住民自身が選んだアカシア、ユーカリ、レモン、パパイヤなどの苗木が育てられています。

 
これからは、この苗木を植栽し、大切に育てていくことになります。住民にとって、水をやり、病気や害虫などから守り、ケアをしていくのは骨の折れる作業です。ただ、その苦労の分だけ、苗木は元気に育ち、地に根を張ってくれることを彼女・彼らはよく知っています。プロジェクトでは、それを後方からサポートしていきます。
 
この活動は、トヨタ環境活動助成プログラムをはじめ、みなさまからのご支援により実施しています。引き続き、応援をよろしくお願いします。
 
 

関連記事

 
 

この記事を書いたのは
田中一弘(たなかかずひろ)
海外事業運営本部 プログラムコーディネーター


大学3年のゼミで、国連職員から難民支援について話を聞き「国際協力を仕事にすること」を決意。国際開発学修士を取得後、2000年にアムダ海外事業本部(AMDA-MINDSの前身)入職。アンゴラでの国内避難民支援など、アフリカ、中南米、アジアの様々な国・地域でのプロジェクトに従事。趣味はトレイルランニング、天体観測、サッカー観戦。岡山のお気に入りスポットは、冬の早朝の操山。きりっと澄んだ空気とオレンジ色の朝焼けが最高。兵庫県出身。