途上国の子どもの目が輝いて見えることに潜む問題~国際協力で忘れてはならないこと 国内事業部 白幡利雄

2020/02/13

子どもたちの目が綺麗! キラキラしてる!!
 
いわゆる開発途上国と呼ばれている国々にNGOの駐在員として赴任していた時、日本から活動地を訪問しに来た日本の方から、こんな言葉をよく聞きました。
 

ネパールの子どもたち

 
私はこれまで、1,000人を超える数の日本人をスタディツアーなどで現場に案内したことがあるのですが、この「子どもの目が輝いている」といった感想は、ほぼ毎回、必ずといっていいほど耳にしてきました。のっぺり顔で世界的に有名(?)な日本人ですから、それに比べて彫りが深く、目も大きく見えるということはあるのかもしれませんが、それだけでは到底説明のつかない量と頻度です。日本とは大きく異なる途上国の生活状況を目のあたりにする中でのことですから、すべてが新鮮に感じられるということなのだろう、と初めの頃はあまり気にしていなかったのですが、やがて、ここにはかなり根深い問題が潜んでいるのではないかと思うようになりました。というのも、子どもの目の輝きに関する感想や意見と並び、こんな質問を受けることがとても多いのに気づいたからです。
 
「最貧国なのに、なんでみんな笑ってるの?」
 
「全然つらそうに見えないけど、どうして?」
 
小屋で勉強する子どもたち(バングラデシュ)

 
こうした質問を受けた際、最初の頃は、正解があるわけではないので、答えは自分で見つけて下さい、と逃げをうちつつも、どこかの本に書いてあるような借り物の意見でごまかしていました。例えば、
 
「どんなに大変な生活を送っていても、耐えられないようなつらい環境にあっても、人は希望を失っては生きていけないのでしょう」
 
「厳しい状況にあるからこそ、むしろ人は毎日を明るく過ごすのではないか」
 
「人間一人ひとりが根源的にもつ生きる力、生き抜こうとする力を感じているのではないか」
 
などといった感じです。
 
屋外で勉強する子どもたち(ネパール)

 
いま考えれば、よくこんなことを訳知り顔でしゃべっていたものだ、と思います。本当に穴があったら入りたい…。まぁ、それはさておき、私自身、生まれて初めてバングラデシュという南アジアの国に駐在した時、同じようなことを感じていたのを、今でもよく覚えています。
 
でも、時間が経ち、現場の景色が目に馴染んでくるにつれ、そもそも、途上国に生まれ育つということは、すなわち生活がつらいことだと考えているのは自分の思い込みであるということに気づきました。「こんな大変な環境に暮らしているのに、なんでみんな笑顔なの?」という感想は、途上国の人々はみんな厳しい表情で暮らしているに違いない。現地に行けば生活の苦しさがすぐに伝わってくるだろう、と思っていたことの裏返しなのですよね。そして、こうした思い込みがあるからこそ、余計に子どもたちの目もキラキラして見えるのではないか、と考えるようになりました。
 
国際協力の現場では、支援する側の私たちが、「こうした方がいい」と思ってしたことが、往々にして裏目に出てしまう、要するに失敗することが本当によくあります。どんな失敗があり、また、それをどう克服してきたのかというお話は、またの機会にご紹介したいと思います。
 
バングラデシュ駐在中にのばした髭を帰国前に剃るためのセレモニーを自宅で開催

 

白幡利雄(しらはたとしお)
海外事業運営本部 本部長

 
学生時代に手話を学んだこと、NGOの存在を知ったことをきっかけに、世界をより良く変えることを一生の仕事にしたいと決意。教育学修士号取得後、日本の国際協力NGOに就職。約21年間、東京事務所で海外事業全体のコーディネーションを担当した他、バングラデシュとネパールに事務所長として駐在。2014年にAMDA-MINDS入職。2020年から現職。趣味は読書と映画鑑賞。岡山のお気に入りスポットは西川緑道公園。東京都出身。

 
 

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