シエラレオネが持つ可能性 シエラレオネ事務所 大谷 聡

2018/06/14

先日の地方出張時、宿泊先の部屋の窓から、毎月一度行われる全国一斉清掃活動の様子を眺めていました。朝の6時からお昼の12時まで街の掃除をする以外は一切の外出禁止。街の人々は手慣れた様子で何時間もコツコツと自分の家の周りの草をむしったり、ゴミを拾ったり、溝さらいをしていました。そして私はこの様子を見ながら「本当にこの国は大きく発展する可能性を秘めているなぁ」と改めて感じていました。

毎月一度行われる全国一斉清掃活動で家の周りを掃除する住民たち
毎月一度行われる全国一斉清掃活動で家の周りを掃除する住民たち

国が成長・発展していく上で大切な要素は色々あると思いますが、その中でも根幹となるのはやはり人だと思います。シエラレオネの人々を一言で表すと(ちょっと褒め過ぎかもしれませんが)「明るく、素直で、優しく、平和的」といった感じでしょうか。日本で「シエラレオネ」を知っている方は、最近なら「エボラ出血熱」、少し前なら「ダイヤモンドを巡る内戦」といったイメージをお持ちかと思います。実際に1991年~2002年まで激しい内戦が行われ、国民の大半はその被害者でした。しかし、彼等はこの辛い経験を糧にして、内戦終了後は平和な毎日を希求し、生活しています。ちょうど3ヶ月前に大統領選挙が行われ、10年ぶりに政権が交代、新しい大統領が選ばれたのですが、その過程で特に大きな混乱もなく、平和裏に政権交代が行われたのは非常に印象的でした。
 
また仕事柄、地方の一次診療所を訪問する機会も多いのですが、目的地への道が分からなくなった時はいつも地元の人々が快く案内してくれます。ある時は、前日の暴風雨で診療所に辿り着くまでに何ヶ所も車が通れない程の倒木があったのですが、その度に地元の人々が一緒になって木を退けてくれたり、新しい道を作ってくれたりしたことがとても印象的でした。と言いますのも、このような場合、以前働いていた他のアフリカの国では必ずお駄賃を要求されるのですが、この国ではそのような経験をしたことがないのです。小さなことのように思えるかもしれませんが「見返りなしに他人のために何かをする」ということは途上国では中々できることではありません。
 
では、大きな可能性を秘めたこの国が飛躍することはできるのでしょうか?色々な要因が複雑に絡み合っており、そこに辿り着くまでには時間がかかると思われますが、これまで2年半、この国の人々に触れ、地方行政の人々と一緒に仕事をしてきて、少しずつですがようやく手ごたえを感じることができてきました。

一次診療所でコミュニティの代表と話し合いを行う県保健局および診療所スタッフ
一次診療所でコミュニティの代表と話し合いを行う県保健局および診療所スタッフ

彼等と同じ目線で話をし、こちら側の考え方を伝えつつも彼等の考え方も尊重する、その上で彼等を信頼して仕事を進めることで、彼等がイニシアチブを発揮し、自律的に良い仕事をすることができるように徐々に変化してきました。引き続き、この国の成長・発展に向けて、彼等が一つずつ成功体験を積み上げていくことができるよう、丁寧に彼等に寄り添いながらサポートしていきたいと思います。

県保健局スタッフと共に期限切れ医薬品の確認・回収を行う筆者
県保健局スタッフと共に期限切れ医薬品の確認・回収を行う筆者