MINDS登山部:事業地の山にお邪魔しました編

2014/12/03
 みなさん、ナマステ(こんにちは)。孤軍奮闘のヒマラヤ登山から約2年、みなさんのご期待に応えるべく登山部が帰ってまいりました。今回の登山は、今年の3月から事業を実施している、ネパールはカブレパランチョウク郡カルパチョウク村への訪問です。そして嬉しいことに2名(日本人1名、ネパール人1名)の新入部員(AMDA-MINDSカトマンズ事務所のスタッフです)が加わり、村に在住する事業スタッフのランジット君を含む総勢4名での登山となりました。

カルパチョウク村は、標高800メートルから1,600メートルにわたって連なる山々の中に集落が点在する農村です。今回は、事業のモニタリングということで4泊5日の日程でこの村を訪ねました。村に9つある全ての「区(集落)」を訪問し、各地域における活動状況を把握することが今回のミッションです。ひとことで「村」と言っても、ひとつずつの集落が遠く離れているので、一日で全ての集落を訪問するのは不可能です。村内は、車が通れる道が集落まで続いている場所も一部ありますが、基本となる移動手段は自分の足。そして、村には宿舎というものもありませんから、夜は村の人のお宅にお邪魔することになります。お風呂にも入れない、洗濯もできない、なかなかハードな5日間になることが予想され、新入部員の内の1名(ネパール人)はやや浮かない表情。かたや、ミッションとはいえ、一応「趣味:登山」を自称するわたくし、都会っ子のネパール人を横目に、うきうきとバックパックを背負いカメラを首からぶら下げ、さながらごきげんなトレッキング旅行者の気分でカトマンズを後にしたのでした。
結論から言うと、本部から現地を訪問した一事業担当者の出張として、AMDA-MINDS史上もっともワイルドだったのではないか、と思えるものとなりました。

5日間の滞在の内、2日目から4日目までは毎日がトレッキングでした。朝は7時頃から歩き始め、夕方暗くなったら到着した村のお宅で眠らせてもらうのです。山道は想像以上に歩きづらく、時には斜面を細く削っただけのけもの道のような場所を歩かなければなりません。そこで足を踏み外し斜面を勢いよく滑り落ちてしまった私は、「ファイトー、いっぱーつ!」 のCMよろしく、間一髪のところで手を事業スタッフに掴んでもらい、無事に引き上げてもらったのでした。機敏なランジット君が私のすぐ後ろを歩いてくれていなかったら、と思うと、今でも鳥肌が立ちます。この他にも、もう道とは呼べない急流の沢を下ったり(案の定、私は水にはまりました)、川の水で髪の毛を洗ったり、日本どころかカトマンズでも経験できないことの連続でした。でも、これが山の暮らしの日常なのです。

移動の途中で立ち寄る集落で、水やお茶(山の村で出してくれるお茶には、なぜか塩が入っていることが多いです)を飲ませてくれたり、畑に実っているみかんや炒ったばかりの落花生を食べさせてくれたり、はたまたさっきまで元気に歩いていた鳥をさばいて夜ごはんにふるまってくれたりと、得体の知れない外国人に対しても村の人はとても親切にしてくれます。どの家も決して裕福ではないにもかかわらず、一見の訪問者に対してさえこのようにもてなしてくれるのは、山で生きていくことの厳しさゆえ、皆、ひとりでは生きていけないことを知っているからではないか、と感じました。
ある集落の家で一夜を明かした時のこと。その家には、唯一の家電製品としてテレビがありました。木製のカァト(ベッド)にくつろいでテレビを眺める男たちと、その傍らで泥を練って作ったかまどに向かって枝をくべ、同じく泥を固めた床に座って調理をする女たちの様子が、近代的な生活とそうでないものの狭間にひっそりと留まっているように感じました。その一方で、確実に時が刻まれており、10年後の彼らの暮らしは、テレビドラマで描かれていた忙しない生活にとって代わられているかもしれません。外部者の憧憬に過ぎないと自覚しつつ、願わくは、もし10年後にこの家を訪れた時も、調理を終えたかまどの残り火で暖をとりながら、コメディドラマを映すテレビを囲み、家族全員で食後のひと時を過ごしたいな、と思うのでした。

 

連なる山々に点在する集落
連なる山々に点在する集落
毎日上り下りを繰り返します
毎日上り下りを繰り返します
家の中のかまどの様子。調理の間は家の中の全てのものが煙でいぶされます
家の中のかまどの様子。調理の間は家の中の全てのものが煙でいぶされます
水の流れに沿って山を下ります
水の流れに沿って山を下ります
村のお母さんたちはたくましい。この荷物をしょって山道を歩きます
村のお母さんたちはたくましい。この荷物をしょって山道を歩きます
私も真似してみましたが・・・
私も真似してみましたが・・・