ネパール震災復興支援活動

2016/03/25
ネパール震災復興支援活動 13 「復興への道のりは遠けれども、歩みを止めることなかれ」
みなさん、ナマステ(こんにちは)。

3月になり、カトマンズはだいぶ暖かい(ときに暑いぐらいの)日差しが照りつけるようになりました。そしてもうすぐ、昨年4月25日に発生した大地震からまる1年が経とうとしています。被災した事業地カルパチョウク村にも、いつになく厳しい冬を乗りこえてようやく春が訪れています。「今年の冬は、本当に厳しかった」と、村の人は口をそろえていいます。震災後、村のほとんどの人が、トタン板や防水シート、また竹やわらなどで作った簡素な仮設住宅で生活しており、家の中にいても寒さをしのぐことができなかったのです。また、結露がトタン板の屋根をつたい寝具や衣類を濡らしてしまうこともありました。この冬、カルパチョウク村では、肺炎で亡くなったお年寄りが2人いますが、もし暖かい家の中で養生することができていたら、と思うとやり切れない気持ちになります。

このような状況で、やはり住環境の整備が優先課題となっています。もちろん、1日も早く新しい家を建て直すことができればそれが理想的なのですが、新たな家の建設のためには、ネパール政府から補償の手続きや耐震構造の承認を得なければならず、これが遅々として進まない中で、村の人たちの精神的、物理的な苦痛はつのる一方です。私たちは、仮設住宅での生活が長引くであろうことを踏まえ、新しい家を建て直すことができるまで、現在の住環境が少しでも快適になることを願いサポートを行っています。

その活動のひとつは、トタン板の配布です。今でも、トタン板は仮設住宅の屋根に使われていますが、外壁が防水シートだったり、わらだったりと、生活空間を守るには心もとない素材である場合が多いのが現状です。さらに、現在の仮設住宅は一部屋だけである場合が多く、調理場もなければ寝室も分かれておらず、特に女性たちから生活上の不便を訴える声が聞かれます。新たにトタン板を手にすることで、住環境スペースを拡大してプライバシーを確保する他、家畜のスペースを別に設置し衛生的な生活を送れるようになります。

国際ロータリー第2760地区国際奉仕委員会の皆さまよりご支援を頂戴し、カルパチョウク村の50世帯に2バンドル(約12枚)ずつのトタン板を配りました。そして、2016年2月29日には、同国際奉仕委員会の9名の方々に、はるばるカルパチョウク村を訪ねていただき、村の人たちの生活やトタン板を活用した仮設住宅を視察いただきました。トタン板を手にしたある家族は言います。「これまで、親戚家族が作った仮設住宅に一緒に住まわせてもらっていたのだけど、これでようやく私たちの家族だけで生活することができるようになります。家の建て直しにはまだまだ時間がかかるけれど、少しずつでももとの生活をとり戻していきたい。日本の皆さんが、いつまでも忘れずにいてくれることが励みになります。本当にどうもありがとう。」

今後は、日本NGO連携無償資金協力による「カブレ郡3行政村における震災後住居再建支援事業」を通じて、倒壊家屋の解体、がれきの撤去支援、及びトタン板の配布を通じた住環境の改善に取り組むと同時に、今後の家屋再建を踏まえ、村の伝統大工への建設技術研修を行っていきます。そしてこれと並行して、農業による収入向上を目指した生活改善への取り組みも継続していきます。

カトマンズ市内や事業地への移動の道中などで、倒壊したままの家屋、片づけられていないがれき、またテントで生活している人々を相変わらず目にします。その時に思うのは、震災からの1年というのは被災した方々にとっては「節目」ではなく、震災後からずっと続いている苦しい日々の中の1日にすぎないのだ、ということです。ネパールの人たちは驚くほど忍耐強く、苦しみや不便な生活が続くことさえも「日常」と捉えてしまうのですが、彼らにとっての本来の「日常」を1日も早くとり戻せるよう、皆さまからの継続的なご支援をお願いできれば幸いです。

トタン板配布の様子
トタン板配布の様子

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完成した家に微笑む住民

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トタン板の活用状況を視察いただきました

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国際ロータリー第2760地区国際奉仕委員会の皆様

 

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詳しくはAMDA-MINDS認定NPO法人へ。
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ネパール中部地震緊急救援 12
2015年9月19日、カルパチョウク村4区、インドラダヤ小・中学校の仮設校舎が完成し、開校式が開かれました。この開校式には、同学校の児童・生徒、先生方や保護者の方々、郡教育局のスーパーバイザーを含む約150名の他、日本からも4名のお客さまにお越しいただき、地域住民による手作りの会らしくなごやかに、そしてにぎやかに開催されました。日本から来ていただいたのは、かねてよりネパールをご支援くださっている、高杉こどもクリニック(岡山県総社市)の高杉尚志院長と息子さんの洋生(ひろき)くん、また先生の同級生でいらっしゃる、石堂智行さまと松本州司さまの4名です。4月25日の地震の際にも、「何かの役に立つなら」とたくさんのご支援を寄せていただきました。今回の仮設校舎は、そのような気持ちを寄せてくださったたくさんの方々のご協力があってこそ、の完成です。村に到着したお客さまたちを、子どもたちが列を作ってお迎えします。屋外の会場にはベンチも用意していましたが、全員が座りきれず、芝生に座っている参加者も多くいました。開校式には、4区以外からもたくさんの住民が参加しており、それぞれの区の住民代表が、喜びと感謝の気持ちを述べました。1区で自宅が全壊したヒラ・マヤ・タマンさんは、「なによりも嬉しいのは、こうやっていつも忘れずにいてくれること、思い続けてくれることです。それだけで、困難なことも乗り越えようとする気持ちがわいてきます」と前に進んでいこうとする気持ちを語ってくれました。開校式の壇上では、日本のみなさんからのプレゼントを学校の子どもたちに手渡しました。ひとつは、ゴールドマン・サックスのコミュニティ・チームワークス(CTW)のみなさんが作ってくださったタペストリー、そしてもうひとつは、青年海外協力隊としてネパールのナワルパラシ郡に赴任している福岡海さんよりいただいたポスターです。4月の地震の時もネパールにいた福岡さんは、なんとか被災地の人々を元気づけようと、ネパール国内、そして世界中にいる彼女の友人に声をかけ、メッセージを掲げた自分の写真を送ってもらい、その写真を寄せ集めて作ったモザイク画像をポスターにして、AMDA-MINDSネパール事務所に届けてくれました。本当にたくさんの方々が、様々な場所から、様々な形で思いを寄せてくださり、そしてその思いを受けた村の人たちが協力して、ようやく完成した仮設校舎です。この校舎で、子どもたちが、毎日安心して楽しく勉強することができるようになりました。

完成した仮設校舎
完成した仮設校舎

子どもたちによる出迎え
子どもたちによる出迎え

テープカットの様子
テープカットの様子

多くの人で賑わう会場
多くの人で賑わう会場

壇上で感謝の言葉を述べる、ヒラ・マヤ・タマンさん
壇上で感謝の言葉を述べる、ヒラ・マヤ・タマンさん

日本のみなさんから届いたプレゼント
日本のみなさんから届いたプレゼント

踊りを披露する子どもたち
踊りを披露する子どもたち

壇上のパフォーマンスに釘づけの生徒たち
壇上のパフォーマンスに釘づけの生徒たち

銘版には、日本のたくさんの人たちからの気持ちが届けられた旨が刻まれています
銘版には、日本のたくさんの人たちからの気持ちが届けられた旨が刻まれています

完成した仮設校舎で熱心に勉強する子どもたち
完成した仮設校舎で熱心に勉強する子どもたち

 

ネパール中部地震緊急救援 11
カルパチョウク村の仮設校舎の建設は、現在、竹壁の設置や床のコンクリート塗りが住民の手で進められています。「校舎」らしくなってきた建物を目の当たりにして、住民たちの作業にも弾みがつき、完成まであと少しという状況です。ここで子どもたちが学べる日ももうすぐです。
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ネパール中部地震緊急救援 10
現在、カルパチョウク村の3ヶ所(4区、7区、9区)で仮設校舎の建設に取り組んでいます。建設は、業者が鉄骨の組み立てとトタン屋根の設置作業を行う以外は、コミュニティ住民が床下の基礎工事、床のセメント塗り、竹壁の設置等、ほとんどの工程を手作業で行います。建設サイトでは、事業スタッフの建設技師が巡回し技術監督を行っています。今は、基礎工事の段階で、4区と9区ではセメントを流し込む溝を掘っているところで、7区ではセメントを固め終わり竹壁の設置にとりかかろうか、というところです。幹線道路から最も遠く、標高が高い場所にある9区では、その場所にたどり着くまでに川の流れを遡らなければなりません。このところ雨が続いて増水しているため、資材を運びあげるのも本当に大変です。私自身もモニタリングでその場所に行くためには、靴も服も水浸しでじゃばじゃばと川の中を歩かなければなりませんでした。そんな状況ですが、一日も早い完成を目指してみんながんばっています。 (小林)
溝の底に石を積み、この上をセメントで固めて基盤を築きます
溝の底に石を積み、この上をセメントで固めて基礎を築きます

4区の状況
4区の状況
床下に敷く小石を運んでいる村の人たち
床下に敷く小石を運んでいる村の人たち

7区の状況。基盤をセメントで固め終わりました
7区の状況。基礎をセメントで固め終わりました

9区の状況。これから基盤固めに入ります
9区の状況。これから基礎固めに入ります

9区に行くためには、この川を遡っていかなければなりません
9区に行くためには、この川を遡っていかなければなりません

 

ネパール中部地震緊急救援 9
2015年8月23日、カルパチョウク村の3ヶ所で、仮設校舎の建設が始まりました。これまで、カブレ郡の教育局と協議し仮設校舎建設の許可を得たり、対象の学校の運営委員会(日本のPTAのようなものです)と話し合いを重ねたりと様々な調整を経て、ついに仮設校舎の建設が始まりました。このように目に見える活動が動き始めたことは、村の人たちにとっても大きな前進となりました。この日は、仮設校舎の骨組みとなる鉄骨をカトマンズから輸送し、これを各建設サイトで組み立てる作業が始まりました。とはいえ、この日までに、住民たちは総出で、斜面を切り崩して整地をしたり、生い茂る雑草を刈ったり、建設に必要な石を切りだしたり、はたまた骨組みを埋めてセメントで固める基礎の部分を地面に掘ったり、と、雨期の晴れ間、また忙しい農作業の合間を縫って、建設を始めるための準備を少しずつ進めてきていたのです。現地での準備はそろって、後はカトマンズから鉄骨が到着するのを待つだけ・・・の状態だったのですが、大雨が続いて道が崩れたり、ネパール全土で実施されたバンダ(ストライキ)の影響を受けるなどで、なかなか建設を始めることができずにいた村の人にとっても、待ちに待ったこの日、となりました。朝から、村のお父さんもお母さんも集まって来て、それぞれができることを協力して作業を進めていきます。足場を竹で組んだり、必要な木材を切ったり、と図面も見ずに着々と作業をしている様子を見ていると、村の人たちが生活の中で培ってきた技術がいかにすばらしいものかを実感します。まさにこれは、村のみんなでつくる、みんなの学校です。この教室に子どもたちの笑顔があふれる日も、もうすぐです。

山の上にある9区では、資材を運びあげるのも一苦労です
山の上にある9区では、資材を運びあげるのも一苦労です

鉄骨をまっすぐ埋めるために糸を張っています。こういう技術も日々の生活で培われたものです
鉄骨をまっすぐ埋めるために糸を張っています。こういう技術も日々の生活で培われたものです

組み上がった鉄骨
組み上がった鉄骨

お母さんたちもがんばっています
お母さんたちもがんばっています

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7月24日(金)19時より岡山国際交流センターで一時帰国中の本部スタッフ/小林麻衣子による報告会を行います。

詳しくはこちら

※この報告会は終了しました。

ネパール中部地震緊急救援 8 「復興の芽生え」
現地調査を終えた海外事業部長の田中一弘が帰国したので、その状況をご報告します。地震発生から2ヶ月半。カブレ郡のカルパチョウク村では、損壊した家屋の近くに防水シートなどを用いて仮設住宅を建て、雨風をしのいでいます。この写真の仮設テントでは、19人の家族が寝ていると聞きました。損壊した家屋は手つかずの状態で残っています。外見からはあまり被害が無かったように見える家も、中に入ると床から天井まで大きなヒビが入っていたり、壁がはがれていたりと、住める状況ではないことがよく分かります。
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そんな中でも、村の人たちは土地を耕し、トウモロコシなどの種を植え、何とか生活を立て直そうと、毎日汗を流しています。もともと日々の生活すら大変だった人たちです。そこにこの大地震です。目の前には損壊した自分の家。これから家族でどう生活していくのか、その資金はどうすればいいのか、途方にくれてもおかしくありません。それでも、自分たちにできることをコツコツと進めていく姿がそこにはあります。その姿を見ると、何とか少しでも安心して生活できるよう支援できればと思わずにはいられません。そして、子どもたちです。急ごしらえのテントの下にも関わらず、一生懸命にみんなで教科書を読み、ノートを取ります。家族にとって、子どもが毎日学校に通 えるということは、大きな支えになるのです。住まいを失った住民自身から、まずは仮設校舎の建設を、との要望が上がり、MINDSではこれを受けて皆様か らのご寄付で仮設校舎を建設することにいたしました。現在、着工に向けて急ピッチで調整を進めています。3校の小中学校で、合計6つの教室を建設します。 学校が再建されるまでには長い時間がかかるものと思われます。それまで、この校舎が彼らの学校です。ここで元気に勉強する子どもたちの姿をご報告できる日を楽しみにしています。
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被災した高齢の母親から話を聞いていたときのことです。ふと横を見ると、倒壊した家屋のがれきの隙間から、トウモロコシの芽がいくつも生えてきていました。現地では、家の中に主要作物であるトウモロコシの種を保管しているのですが、家が倒壊してしまったため、取り出せずにいたのだそうです。こうした環境でも芽生えるトウモロコシのように、カルパチョウク村の人たちが少しずつでも復興の道を歩んでいけるよう、支援していきたいと思います。みなさまのご支援をよろしくお願いいたします。
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ネパール中部地震緊急救援 7
2015 年5月31日。ネパール国内の全小中学校で授業が再開されることになりました。被災した事業地、カルパチョウク村でも震災後初めて、5つある小中学校に子どもたちの笑顔が集まりました。とはいえ、学校の建物自体も損壊しており、余震で崩れる危険性が高いため、子どもたちは防水シートを広げた簡易テントの下で机を囲んでいます。AMDA-MINDSはこれまで、各世帯に対する物資支援や保健施設に対する医薬品の提供を現地パートナーのSAGUNと連携して行ってきました。そして引き続き、子どもたちが安心して、笑って過ごすことができる環境を整えることが優先課題であると考えています。31 日の学校再開に合わせて、現地事務所統括の松本と本部担当の小林は現地スタッフと共に5つの小中学校を訪問しました。私たちが訪問した際、8区にあるブメスタン小学校では、1,2年生を対象にネパール語の授業が行われていました。先生は、歌を歌ったり、お話を聞かせたりして、子どもたちが楽しい気持ちになれるよう努めている、と話していました。カルパチョウク村でもっとも震災の被害が大きかった4区にあるインドラダヤ小中学校では、校長先生を含めほとんどの教職員の家が全壊し、生活再建の目処が立たずにいる状況です。そのような中校長先生は、「子どもたちは村の希望です。一日も早く、子どもの笑顔があふれる学校を取り戻したい。」と語ってくれました。私たちは各学校の教員や運営委員会と話し合い、損壊した校舎の修繕や建て直しが完了するまでの仮校舎を設置すること、これと併せて、子どもたちのメンタルケアや避難訓練を実施する方針を検討しています。これから長く続く復興活動の第一歩として、まず、子どもたちが笑って過ごすことができる環境をつくりたい。引き続き、皆さまからのご支援を、どうぞよろしくお願い致します。
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ネパール中部地震緊急救援 6

被災から今日で一か月を迎える現地の様子を写真でお伝えします。

カブレ郡でSAGUNが配布する緊急用の防水シート
カブレ郡でSAGUNが配布する緊急用の防水シート

防水シートを住民に手渡す事業統括の松本
防水シートを住民に手渡す事業統括の松本

家の中はこのような状況でとても安心して住むことはできない
家の中はこのような状況でとても安心して住むことはできない

余震を恐れ、人々は防水シートを張り渡しただけの簡易テントで寝泊まりする
余震を恐れ、人々は防水シートを張り渡しただけの簡易テントで寝泊まりする

丘陵地がほとんどを占めるカブレ郡南部で人々はわずかな平坦地にテントを張ってしのいでいる
丘陵地がほとんどを占めるカブレ郡南部で人々はわずかな平坦地にテントを張ってしのいでいる

丘陵地がほとんどを占めるカブレ郡南部で人々はわずかな平坦地にテントを張ってしのいでいる
丘陵地がほとんどを占めるカブレ郡南部で人々はわずかな平坦地にテントを張ってしのいでいる

 

ネパール中部地震緊急救援 5
現地で被災者支援活動を続けているスタッフより、現地のレポートが届きました。===========================5月12日(火)、マグニチュード7.4の大きな余震が起きました。その揺れは、私がこれまでに体験したどの地震よりも激しく、恐怖以外のなにものでもなく、私は「外に!外に!」と叫びながら、ネパール人スタッフと事務所の外に飛び出しました。電線が大きく揺れているのを眺めながら、事業地の村の人たちのことを思いました。ちゃんと逃げられただろうか、建物の被害が出ていないだろうか・・・。13 日の朝になっても事業地とは連絡が取れず、急きょ、パートナー団体(サグン)のスタッフと共に、事業対象地のカルパチョウク村、また隣接するシパリ・チラ ウネ村とワルティン村を訪ねることになりました。前日の夜、いざという時にすぐ逃げられるよう、バックパックに荷物を詰めていたのが功を奏して、10分で出発の準備が整いました。事業地に到着して、まず、カルパチョウク村の1区と2区を訪ねました。案の定、前回の地震で亀裂が入っていた多くの建物が全壊していました。事業を通じて形成した青年グループメンバーのマノーズ・シュレスタ君の家も、かつての面影を全く失っていました(写真①)。彼は言います。「僕がこれまでもらってきた、成績証明書や卒業証書ががれきに埋もれてしまった。大事な本も、辞書も、全部なくなった。食べ物や服がないこと よりも、僕が勉強してきた軌跡や指針としていたものがなくなってしまったことがいちばんつらいです。」それでも彼は、「こんな時だからこそ、みんなのため に動いていたい。自分が希望を持っていないと、周りの人にも希望を与えられないから」と言って、今回の私の事業地視察に最後まで同行してくれました(写真 ②)。

①全壊したマノーズくんの家

②ワルティンVDCのおばあさんと話をするマノーズ君(右)
住む場所を失った村の人たちは、行くあてもなく、崩れた家の跡地に防水シートを被せただけの小さなスペースで暮らしています(写真③)。また、地理的な要因からまだ支援が充分に行き届いていないワルティン村では、防水シートやテントを手に入れることができず、5世帯とその家畜が小さな養鶏小屋に身を 寄せているケースもありました(写真④)。6月以降、本格的な雨期が始まることを考えると、浸水でがれきがまた崩れる危険、衛生状態の悪化から感染症が蔓延する危険など、人々の安全と健康を脅かすリスクがすぐ側まで迫っています。

③がれきの上に防水シートを張っただけの「シェルター」では子どもの笑顔は守れません

④養鶏小屋は5世帯が暮らすには狭すぎる上、その劣悪な衛生面から病気になることが心配されます
AMDA- MINDSは、これまでに基本的な医薬品の提供を行っており、それを受けたサブ・ヘルスポスト(公的な地域診療所)のスタッフであるマッリカ・バスネットさんはこう話してくれました。「私の家も半分が崩れてしまい、住むことはおろか修理することさえ不可能です。家には10ヶ月の息子と4歳の娘がいて、お母さん行かないで、と言って泣きます。それでも、私がここに来なければ必要としている人に薬を渡すことができません。こんな時に人の役に立てないなら、この仕事をしてきた意味はないと思ってがんばっています。」(写真⑤)余震による家屋の倒壊を恐れて、今、3つの村の全1,400世帯全員が屋外で夜を明かしています。私自身、村に滞在中は外にマットレスを敷いて寝ていました。余震の度に目が覚め、「もう揺れないで・・」と願いながらまた目を閉じる、の繰り返しでした。そんな生活を、あの地震が発生してからずっと続けている村の人たちの身体的、精神的疲労は限界に達しています。その疲労の影響を顕著に受けるのは、やはり、お年寄りや小さな子どもです。シパリ・チラウネの1区に住む、シヤニ・タマンさんは、2人の娘が嫁ぎ、夫に先立たれ、ヤギの乳を売ってなんとかひとりの生活を営んでいました。4 月25日の地震で家が全壊し、今はそのがれきの上で、ベッドがひとつだけ入る小さな小屋に暮らしています(小屋は村の若者が廃材で建ててくれたそうです)。「もう、何もないよ。結婚して夫と築いてきた証も、子ども達の思い出も全部なくなったよ。家と一緒にいっそのこと自分も死んでしまった方がどれだけよかったか、と心の底から思うよ。それでも、これまで私を生かしてくれたヤギたちがいるから、なんとかこの子たちの世話をしてやらないとね・・・。」泣きながら話してくれたシヤニさんの横で、私も涙をこらえることができませんでした(写真⑥)。村にいるのは「多くの被災者のうちのひとり」ではなく、これまで生きてきた歴史と物語を持つひとりひとりの人間なのだ、ということを強く思います。安全で安心して寝ることができる環境を確保したい。村の人たちに、なんとか希望を持ってもらいたい。これが今の私たちの目標です。どうか、皆さまからのより多くのご支援をお願い致します。ご支援はこちらからこれまでの支援状況はこちらから

⑤自身も被災しながら、ヘルスポストで勤務を続けるマッリカさん(右)

⑥ヤギにえさをやるために、62歳のシヤニさんは毎日2回草刈りに行かなければなりません
ネパール中部地震緊急救援 4

5月12日(火)午後4時5分(ネパール時間午後0時50分)頃、M7.3の大きな余震が発生しました。その後も大きな余震が相次ぎ、多くの住民が建物の外に避難しています。MINDSの事務所に被害はなく、現地で活動している松本千穂、小林麻衣子の両名及び関係者の無事が確認できています。現時点で活動地のカブレパランチョウク郡(以下カブレ郡)のカルパチョウク行政村の情報は入手できていませんが、隣接するマンガルタール行政村では2件の家屋が全壊したとの情報を得ています。余震による被害の状況を確認するため、小林が現地に向かいました。

ネパール中部地震緊急救援 3
AMDA-MINDSは、現地NGO(SAGUN)と協力して農村開発事業を実施してきたカブレパランチョウク郡(以下カブレ郡)において、緊急救援活動を行っています。発災から2週間が経過し、屋外での寝泊りを余儀なくされている住民たちからは、外傷のほか、発熱、咳、下痢、腹痛などの体調不良を訴える声が多く聞かれ始めましたが、薬が手に入らない状況が続いていました。そこでAMDA-MINDSは、5月9日(土)、カブレ郡のカルパチョウク行政村ならびにマンガルタール行政村にて、ヘルスポスト(公的保健施設)に対し医薬品セット(鎮痛剤、消毒液、軟膏、絆創膏など)を供与しました。これら医薬品により、2つのヘルスポストで適切な処置が可能になりました。また、雨期が近づいているため住居の確保が早急に必要になっており、テントの配布も開始しました。10年前に夫を亡くしたカルパチョウク行政村のある女性。「近所の人の支えもありこれまで何とか生活してきたが、今回の地震で家が全壊してしまった。もう1人で生きていく意味がない」と消えそうな声で話してくれました。また別の女性は、「これまで、夫と二人で汗水流し一生懸命働いて5人の子どもたちを育ててきた。これからどうやって暮らしていけば良いのか…」と涙を流しながら語っていました。AMDA-MINDSは、物資の配布に加え、被災した方々の気持ちに寄り添いながら、地域の復興に向けて支援活動を行います。同郡における被災者支援活動にご協力をお願いいたします。

ヘルスポストスタッフに対し、配布した医薬品の説明を行っているスタッフ(右)
ヘルスポストスタッフに対し、配布した医薬品の説明を行う小林麻衣子(右)

支援が行き届いていない地方において、医薬品セットのニーズは高い
支援が行き届いていない地方において、医薬品セットのニーズは高い

手持ちのビニールシートを利用している人もいますが、風雨に耐え得るものではありません
手持ちのビニールシートを利用する人もいるが、風雨に耐え得るものではない

被災した住民たちの悲しみや戸惑いは計り知れません
被災した住民たちの悲しみや戸惑いは計り知れない
ネパール中部地震緊急救援 2
AMDA-MINDSはカブレパランチョウク郡(以下カブレ郡)において、現地NGO(SAGUN)と協力して農村開発事業を実施しています。しかしながら、今回の地震により大きく被災し、5月3日付のネパール政府発表によると、死者311人、負傷者934人の犠牲者が出ています。住居の全壊数は首都カトマンズより多く、約30,000戸(カトマンズは約28,000戸)に達しています。カブレ郡では、住居の約5割が全壊、それを含め全体で9割以上の世帯に被害が出ており、頻繁に起こる余震から屋外での寝泊りを強いられています。例年雨季の始まりは6月からですが、すでに雨が降り出しています。住民の中には(ごく一部の世帯)手持ちのビニールシートを利用している人もいますが、風雨に耐え得るものではありません。また、十分な数も確保ができていないため、限定的にテントを配布しました。まだまだ数が不足しており、5月中はテントの配布を継続する予定です。並行して、各村区に在住する女性保健ボランティア、および診療所へ医薬品の供与も行う予定です。電気などのライフラインは今も復旧しておらず、現地では、充電式の懐中電灯や消毒液や脱脂綿、経口補水塩(ORS)などの衛生関連の物資も必要です。・3000円で消毒液や脱脂綿、経口補水塩などの衛生関連キットを3世帯に配布できます。・5000円でテントと衛生関連キットを1世帯に配布できます。・10000円で雨露をしのげるテントを3世帯に配布できます同郡の被災者に対する支援活動にご協力をお願いいたします。
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家が全壊した地域住民

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全壊した家屋
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ビニールシートで作った避難スペース
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テントの配布

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AMDA-MINDSはAMDAグループの一員として、主に中長期にわたる農村開発、健康増進プロジェクトを実施していますが、活動を行っているカブレパランチョウク郡カルパチョウク行政村*が今回の地震で大きく被災し、地元関係者からの支援要請が届いたことから、ただちに住民に対し救援活動を行うことを決定しました。

現地調査の結果、同村では住居の約5割が全壊、それを含め全体で9割以上の世帯で住居に被害が出ています。現地は6月からの本格的な雨季を前に既に雨が降り出し、余震に怯えて屋外で寝泊りする住民が雨露をしのぐためのテントやビニールシート、電灯などが早急に必要です。電気などのライフラインは今も復旧しておらず、今後大規模な国際援助が入る見通しも立っていません。

みなさまのご支援をぜひお願いいたします。

*首都カトマンズから北東約50km