元スタッフの今を訪ねて ~東京家政大学健康科学部助教 里英子さん(後編)

2018/10/15

今回のTea Breakは、AMDA-MINDSの社会開発事業に携わった元スタッフの今を訪ねる企画です。第1弾は、ザンビアの首都ルサカ市で、スラム地域における結核・HIV統合治療支援事業の保健専門家として派遣された里英子さんです。現在は、東京家政大学健康科学部の助教として、後進の育成に取り組まれています。

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後列中央が里さん。ザンビアにてスタッフや関係者と。
後列中央が里さん。ザンビアにてボランティアらと。

前編はこちらから。

自分の無力さを実感し、帰国後公衆衛生について学び直し、日本の臨床でHIV看護を経て、現在は看護師育成に携わっています。AMDA-MINDSでの仕事もケニアのボランティア先で現理事長との出会いがきっかけでした。今回もご縁があり、教育の現場におりますが、まだまだ不慣れな一教員にすぎません。そんな私が、つい先日国際看護についての講義を担当する機会に恵まれました。

ご承知のように、超高齢社会を迎えた日本は、労働人口の減少から外国人の力をなお一層借りなければ成り立たない社会で、EPA(経済連携協定)看護・介護受入事業により、外国人の医療福祉人材も実際に働いています。授業のなかで、国際看護の概要や多文化共生、国際協力のかたち、実際の活動について、学生達へ伝えました。

「海外で看護師として働きたいという夢がある」「成績も悪いし英語も話せないから諦めていたけど、いつか挑戦したい」「関心があまりなかったけど、興味がわいた」「大変そうというイメージは変わらなかったが、もっと知りたいと思った」「病気を持っている人が元気になる姿を現地の人たちと見守りたいと思った」「国が違っても看護の根底は同じ」「医療従事者や国民の教育、環境の整備が遠回りのようだが、その地域の未来を創ることに繋がると思った」「日本にいても外国人患者のお世話をすることがあることがわかった」「祖父が入居している施設に外国人のスタッフが何人もいる」「国際看護の対象となる人は日本にもいる」「海外に行くだけが国際看護ではないことがわかった」「実際働いた経験のある人の話を聞けてよかった」等など。授業中問いかけても普段はシーンとしている学生達ですが、心の奥に秘めた想いや素晴らしい感性を持っていることを知る機会となり、さまざまな反応からやってきたことは決して無駄ではなかったと思えました。

またグローバル社会だからこそ、何らかの形で外国に縁のある学生がいることもわかりました。海外で生まれた(ので国際看護にお世話になった一人)、海外で育った、国際交流事業に参加した、短期留学したことがある等々。特別な人が活動しているわけではなく、経験者が身近にいる、誰でもどこにいても国際協力に貢献できるチャンスはあるのだと学生は目をキラキラさせていました。これまでの経験を若い世代に伝えることも私の役割のひとつだと再認識した瞬間であり、教育の大切さや影響力の大きさを知る機会にもなりました。

ザンビアでの経験は決して楽しい想い出ばかりではありません。しかしすべてが私の糧となり、多文化理解や、人生観・看護観の変化へと繋がり、いまの私を形成する一端になったと確信しています。その時々の経験がどういう形で繋がっていくのか、本当に活かせるのか、疑心暗鬼ではありましたが、「できることをできる時に一生懸命する」「諦めない」精神が、いつかどこかで形になり、いろんな可能性が広がっていくのだと思えてなりません。

なんでもいいと思います。皆さんもその一歩を踏みだしてみませんか?