押し寄せるキャッシュレス化の波 シエラレオネ事務所 西野義崇

2017/11/22

シエラレオネでは、9月のTea Breakで松本が書いたように、日常生活では、結構ボロボロになった現金が使われています。ただ、現金しか決済手段が無いかというと、そうでもありません。現在の日本ではいたるところでICチップを用いた電子マネーや、クレジットカード、デビットカードなどでの支払いができますが、こうしたキャッシュレス化の波は、西アフリカ シエラレオネにも例外なく押し寄せてきています。

携帯電話マネーのパンフレット(写真1)
携帯電話マネーのパンフレット(写真1)

シエラレオネの大手携帯電話会社では、USSD (Unstructured Supplementary Service Data) と呼ばれるシステムを用いた送金サービスが提供されています(シエラレオネ以外でも多くのアフリカ諸国で同様の仕組みが存在します)。「○○(携帯電話会社の名前)マネー」と呼ばれ、自分の電話番号に紐付けされたアカウント(銀行口座のようなもの)に、携帯電話会社のオフィスや町中のいたるところにある小さなブースで現金を預けます。すると、その分が自分のアカウントに積み増しされます。ちょうどインターネットバンキングと似たようなシステムだと思って頂いて差し支えないかと思います。写真1は、こうした「○○マネー」の使用方法を解説したパンフレットです。

OrangeMoneyのメニュー画面(写真2)
OrangeMoneyのメニュー画面(写真2)

入出金はSMSで通知が来るほか、USSDコードでも残高確認等ができるようになっています。これはどのような仕組みかというと、携帯電話(スマートフォンならば電話アプリを起動し、キーボードを開く)に「*500#」「*161#」といったコード(携帯電話会社によって異なる)を入力し、通話ボタンを押します。すると、電話がかかるのではなく、メッセージが表示され(写真2)、それに従って操作を行うと、他者のアカウントへの送金(同じ携帯電話会社宛てしかできません)、電気代や衛星テレビ代の支払い、スーパーマーケットでの買い物の際の決済などに使用できます(現在のところ、使用できる店舗は限られています)。例えば、電気代の支払いをしたいとします(シエラレオネでは、電気代はプリペイド式)。画面の手順に従い、支払額、自分の家の電気メーターの番号を入力するとすぐに、SMSで20桁のトークン番号が送られてきます。これを家の電気メーターに入力すると、支払った額に応じた電力量が積み増しされます。
 
このようなモバイル端末を用いた送金システムは、電気、インターネットの無い僻地でも使用できるため、アフリカの送金システムに革命をもたらしていると言っても過言ではないでしょう。
 
シエラレオネでは、上記のようなUSSDを用いたサービス以外にもキャッシュレス決済サービスが提供されています。先日、フリータウン市内のとあるレストランを訪れたところ、写真3のようなスマートフォンでQRコードを読み込んで支払う仕組みを近々導入する予定だと伺いました。ちょうど日本にも似たようなサービスがありますので、ご利用になっている方は感覚的に分かりやすいかもしれません。また、一部の高級レストランやホテルなどでは、クレジットカードやデビットカードが利用できるところもあります。グローバル化の波、IT化の波、キャッシュレス化の波はシエラレオネとて例外ではありません。

レストランでのスマホ支払(写真3)
レストランでのスマホ支払(写真3)

少し話題が逸れますが、モバイル通信に関して言えば、シエラレオネにはまだLTEはありませんが(LTEが既に提供されているアフリカ諸国も実はたくさんあります)、携帯電話会社は “3.75G”や”3G++”などと称して、HSPA+規格でのモバイル通信サービスを提供しており、スマートフォンのチャット/メッセンジャー・アプリなどがコミュニケーションのスタイルを一変させています。このような技術の進歩、マーケットを通じたイノベーションには見るべきものがあります。こうした側面からのシエラレオネの発展にも注目していきたいと思います。

初めてのスマホ体験(写真4)
初めてのスマホ体験(写真4)