「withコロナ」なんて無理!?徹底した対策と市民の反応 ミャンマー事務所 西尾浩美

2020/10/12

あらゆる場所に人の往来に注意を促す看板が設置されている(ヤンゴン、10月11日撮影)


中国やインドなど5カ国と国境を接するミャンマー。武漢で新型コロナウイルスが大流行した1月から、いずれミャンマーでも感染爆発が起きると、誰もが覚悟していました。ところが予想に反し、8月下旬までそうした状況にはなりませんでした。かわりに聞こえてきたのは、政府への信頼の声。この間、いったい何が起きていたのでしょうか?コロナ禍のリアルなミャンマーの様子を、現地からお伝えします。

ミャンマーで初めて感染者が確認されたのは、3月下旬。それまでは、世界中に感染が広がる中、なぜか取り残されたかのように感染者ゼロを誇っていました。当時ミャンマー人の友人からは「本当はもう感染者がいるけど、政府が隠してるって噂だよ」と聞くこともありました。長年の軍事独裁政権から民主化して間もないミャンマーのこと、やはりまだ政府への不信感は根深いなぁと感じたものです。

しかし感染者が出た後の政府の対応は、そうした疑念を完全に払拭するものでした。まず人々を安心させたのは、情報が非常にオープンにされたこと。特にミャンマーのスマホユーザーのほぼ全員が利用するFacebookが、とても有効に活用されました。

保健スポーツ省の公式アカウントには、毎日いち早く感染者数やコロナ関連の通知がアップされます。カリスマ的人気を誇るアウンサンスーチー氏も、コロナを機にアカウントを開設。270万人のフォロワーに向け、国家レベルのコロナ対策会議を次々とライブ配信し、何十万もの「いいね」を集めました。
AMDA-MINDSの現地スタッフは「政府は嘘をついてないはず。今は政党がたくさんあるから、バレたら攻撃されるでしょ。コロナが来たのが民主化の後で本当に良かった」と笑って話してくれました。

アウンサンスーチー氏率いる与党NLDグッズ、今年はマスクが大人気!


早いのは情報だけではありません。感染対策もあっという間です。初の感染者が出た翌日には、全世界からミャンマーへの入国が事実上禁止に。市中感染が確認されると、夜間外出や集会の禁止、マスクの着用義務などが立て続けに発令されました。また、陽性者が出た家の周囲は容赦なくロックダウンされます。こうした規則に違反した逮捕者は、数千人にも上りました。

驚くのは、これらの規則が、発表の翌朝からすぐに適用されること。日本のような「〇日後に緊急事態宣言が出される見込み」といったスピード感ではないのです。あまりに急で厳しい制限に批判が出そうなものですが、ミャンマー人は概ね「仕方ない」と納得している様子。感染拡大を抑えるためには個人の自由が犠牲になるのもやむをえない、という功利主義的な社会通念があるようです。

エレベーターのボタンは爪楊枝で!いたるところで、市民の創意工夫が光ります。


この意識を支えるのは、衛生状態や医療資源の乏しさなど、ミャンマーの脆弱さを自覚する市民の、危機意識の高さです。強権的ともいえる感染対策も、市民からは「政府は本当によくやってくれている」と共感を得ています。昨年70%だったスーチー氏への支持率も、今年10月には79%に急上昇したとの調査結果も。「withコロナ」などという言葉は、医療体制の整った先進国でしか通用しないのかもしれません。

徹底した対策で感染者数の累計を300人台に抑えてきたミャンマーですが、残念ながら8月末から一気に感染が広がってしまいました(10/8現在22,445人, 保健スポーツ省発表)。一日の新規感染者の数が1,000人を超える日もあり、最大の都市であるヤンゴンは全域がセミロックダウン。来月には5年に1度の総選挙が予定されていますが、大勢で集まることができない今、選挙戦の舞台はSNSや選挙アプリに移行しつつあります。

目まぐるしく変化するミャンマーで、AMDA-MINDSは関係する人々みんなの健康と安全に気を付けながら、活動を続けています。引き続きご支援をよろしくお願いします。
 
 
 
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