駐在員は見た!ミャンマー伝統の「世界で最も過激な格闘技」 ミャンマー事務所 西尾浩美

2020/01/10

12月26日、ミャンマーに一足早く「新年」がやってきました。と言っても、この日はミャンマーに135あると言われる民族の一つ、カイン族(カレン族ともいう)のお正月。
 
そのカイン新年祭の一環として開催されたのが、ミャンマー伝統の格闘技「ラウェイ」の大会!!カイン族は勇猛な民族として名を馳せ、有名なラウェイ選手を多数輩出しているため、新年には伝統的にラウェイ大会を催すのだそうです。
 

サッカー場に設置されたリング。伝統音楽の生演奏が気分を高揚させる。

 
ラウェイは「世界で最も過激な格闘技」といわれ、パンチやキックの他、投げ、頭突き、膝蹴り、肘打ちなど、ほとんど何でもアリ。しかも殴り合う拳にはバンデージのみ(グローブなし!)。判定による勝敗はなく、ダウンの回数制限もないので、どちらかが起き上がれなくなったときにのみ勝敗が決まります。
 
もともと格闘技は見るのも苦手だったのに、なぜかミャンマーでキックボクシングを始めてしまった私。仲間の2人が、このラウェイ大会に出場したため、リングサイドで応援してきました。
 
強敵相手に闘う友人。大歓声をBGMに、殴り合う音が鈍く響く。

 
仲間の一人は、相手からの頭突きによる大量出血でTKO負けを喫するなど、文字通りの死闘。汗まみれ(時に血まみれ)なのですが、心身すべてを懸けて闘う彼らの姿は、ものすごく崇高に見えました。
 
試合前は「そんな危険な試合に出なくても…」などと思っていましたが、命懸けだからこそ、覚悟と精神力のある人にしか立てない高みがあるのですね。格闘技の魅力が少しわかった気がしました。
 
…ところでこのラウェイ、試合中は確かに「世界一過激」なのですが、一部始終を見ていると、過激なだけではないことに気づきます。実は非常に礼儀正しく、人を敬う気持ちに溢れた競技だったのです。
 
大会開始前、精霊に祈りを捧げるレフリーたち。

 
試合前には、審判たちが揃ってナッ神(ミャンマー土着の精霊)に祈りを捧げます。選手も、試合後には、闘い終えたばかりの身体でリングに頭をついて祈りを捧げます。
 
選手たちは概して礼儀正しく、試合中に倒れた相手に、対戦相手が手を貸して立ち上がらせる場面も度々見られました。そんな時は、両サイドの観客が拍手と歓声で、その態度を称えます。逆に相手に失礼な言動や挑発的な態度をとると、審判に注意を受けます。試合に勝った選手は、派手なパフォーマンスをすることはなく、伝統のダンスをゆっくりと踊った後、静かにリングを去ります。
 
正直なところ、試合を見るまでは「世界で最も過激な格闘技」なんて、ミャンマー人には不似合いだなぁ、と思っていました。ミャンマー人は本当に穏やかで優しい人が多いからです。でも、この礼節を重んじる姿勢や、選手の振る舞いを見て、「あぁ、やっぱりミャンマーの格闘技だ」と実感しました。
 
世界一過激な格闘技ですら、どこか優しいミャンマー。私のミャンマーへの愛は、これからもますます深まっていきそうです。
 

西尾浩美(にしおひろみ)
ミャンマー事業 業務調整員

文学部に通っていた大学時代、NGOのプログラムに参加したりバックパッカーで旅をしたりしているうちに、途上国医療に携わりたいと思い立つ。看護学科に入り直し、看護師として医療現場や被災地で働いた後、青年海外協力隊としてベトナムの病院にて活動。2018年にAMDA-MINDS入職。趣味は読書とアウトドア。キャンプ場で焚火にあたりながら本を読むのが至福の時。岡山のお気に入りスポットは、奉還町の某ゲストハウス。神奈川県出身。

 
 

 
 
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