MINDS登山部 5,360メートルへの道のり ③富士山より高い場所

2014/07/24
みなさん、ナマステ。
「ナマステ」って、ネパール語の日常的な挨拶ですが、100以上も言語があるネパールではそれぞれに挨拶も違うようです。ちなみに、山岳地に多く住んでいるシェルパ族の言葉では「タシデレ」と言います。さて前回は、出発から2日目にナムチェ・バザール(3,440m)に到着するまでをお話ししました。ナムチェ・バザールは、チベットからはるばる山を越えてやってきた行商人が、交易市場(バザール)を開いたことで栄えてきた、エベレスト街道最大の集落です。山の斜面に沿って「コ」の字型に幾重にも建物が重なり、周囲の山から見下ろすと、その町並みが空中に浮かんでいるようにも見えます。現在でも、毎週土曜日にはチベタン・バザールが開かれますが、エベレスト方面に向かうトレッカーにとっては、ここが「近代文明」に触れることができる最後の場所でもあるため、高度順応を兼ねて2,3泊する人が多いようです。私はというと、タメル(第1回参照)と変わらないような、レストランやパン屋さん、スーパーマーケットも魅力的でしたが、団体トレッカーたちが、賑やかに食事したりビール飲んだりしている側で、ひとりじゃがいも(この辺のじゃがいもはおいしいと有名なのです)をつつく寂しさが身にしみるので、次の日にはとなり村のクムジュンに行くことにしました。出発から3日目。標高3,970mにあるクムジュンに到着しました。ナムチェからクムジュンは、峠をひとつ越えるだけ、3時間の短いトレッキング。私はここで2泊して、高度順応をすることにしました。スパルタのシェルパ氏曰く「動いてないと順応できないよ」とのことで、宿に到着した後も休憩することなく、ひたすら村やその周辺を歩き回るのですが、さすがに富士山(3,770m)より高い場所だけあって、少し歩いただけで息切れがします。それでもこの村には、300年前に死んだイェティ(雪男)の頭(と言われているけど、どう見ても人工的)が祀られているお寺があったり、ネパールの国鳥「ダンフェ」が降りてくる畑があったりとなかなか楽しい。特にダンフェは、この村以外では見ることができず、そのうえ、早朝と夕方の短い時間だけしか降りてこないという希少度の高さで、私以上にシェルパ氏が(私に見せたいと)必死。実際、初日の夕方は見ることができず、2日目の夕方に積み上げた牧草の陰で3時間ほど待ち伏せをしてやっと見ることができたので、感動もひとしおでした。

クムジュン滞在中に、村を取り囲む山のひとつ、クンデ・ピークに「散歩」に行きました。こうやって、予定を外れて行ってみたいところにふらりと行けるのは、おひとりトレッキングならでは。シェルパ氏も気楽なもので、道中にある親戚の家に寄って「ネパール語をしゃべるジャパニバヒニ(日本の妹)」にお茶をふるまってくれたり、地元の人しか通らない絶景ポイントに連れていってくれたりと、サービス精神旺盛でした。

クンデ・ピークは標高4,238m。今まで歩いて来た道を見渡せるので、自分が今いる場所がとても高い場所だということが分かるのに、それよりももっと高い山が目の前にいくつもある。
世界中の登山家たちが目指す「世界で一番高い場所」に、私自身が登ることは到底想像できないけれど、そこに憧れる人たちの気持ちは、少しだけ分かるような気がしたのでした。

「④氷河に沿って歩く。水と岩の世界」に続く

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ナムチェ・バザール
イェティの頭・・・?
イェティの頭・・・?
ネパールの国鳥「ダンフェ」9色の羽根をまとっています。
ネパールの国鳥「ダンフェ」9色の羽根をまとっています。
クンデ・ピークに登頂しました。
クンデ・ピークに登頂しました。

TS3W0196
クンデ・ピークから望むタムセルク