ザンビアの子どもの笑顔のために 青年海外協力隊(公衆衛生) 森本裕也

2013/08/22

ムリシャーニ?(現地のベンバ語の挨拶「How are you?」)
私は平成25年1月より青年海外協力隊としてザンビア共和国ンドラ市(首都ルサカ市から320キロ北上)のムシリ保健センターに配属されています。
同地区がJICA技術協力プロジェクト「都市コミュニティ小児保健システム強化プロジェクト」(アスカ・ワールド・コンサルタント株式会社とAMDA社会開発機構が共同で実施中)の対象地となっており、プロジェクト連携隊員として、保健センターを中心に保健活動を行っています。

このとても発音しづらい「ンドラ(Ndola)」ですが、ザンビアで3番目に大きい都市で、ザンビア経済において、重要な位置を占めています。ザンビアの経済を支えているのは、「銅」です。日本の10円玉にもザンビアの銅が使用されているのだとか・・・。ここ「ンドラ」は銅山が豊富にあるコッパーベルト州の州都なのです。おかげで、途上国とは思えないほど発展しています。きれいなアパートやお店が立ち並び、水道、電気、道路、インターネットはきっちり整備されています。町の人達もオシャレです。ビシッとスーツを着こなしている男性たち、ばっちりメイクし、カラフルな洋服を着ている女性たち、学校や幼稚園の制服にキャラクターのリュックを背負った子どもたち。私が思い描いていたアフリカとは違う現実がここにはあります。

しかし、この中心街から自転車を40分ほど走らせると状況は一変。レンガと赤土で造られた薄暗い家、地面に穴を掘っただけのトイレ、仕事がなく平日の昼間からバーでお酒を飲んで騒ぐ人たち、大きなバケツを頭に乗せ水を運ぶ女性たち、裸足にボロボロの服でワイワイはしゃぐ子どもたち、舗装されていない凸凹の道路、ゴミの山。私の配属先のムシリ保健センターはこのような、コンパウンド(低所得層の非計画居住地区)と呼ばれる地区にあります。

この保健センターでは患者の診療だけでなく、妊婦健診、乳幼児の予防接種、HIV検査、家族計画指導などの医療・保健サービスを提供しています。しかし人口5万人以上の大きなコンパウンドである、ムシリ地区。ひとつの保健センターだけで、住民全体にサービスを提供するのは不可能です。そこで、地域のボランティアが主体となって、GMP(Growth monitoring and promotion)という活動を実施しています(12エリア、各1回/週)。これは、5歳以下の乳幼児の体重を測定・記録し、健康教育を行うことによって、乳幼児の健康維持・促進を図るプログラムです。乳幼児死亡率が最も多い国の1つであると言われるザンビアにおいて、これは非常に重要な活動です。私は毎日のように地域に出かけ、この活動のお手伝いをしています。

ただ最近になり、このGMPが正しく機能していないことに気が付きました。ボランティアたちは体重測定と記録に必死で、健康教育が十分にできていないのです。体重が増加していない子どもがいても、十分なサービスを提供できていない現状。“これではいけない”と思い、自分に何ができるのかと考えた結果、7月から母親への「栄養指導」を始めました。片言のベンバ語と栄養指導教材を駆使し、子どもが前日に食べた食品を聞き取り、食事量・バランスなどのアドバイスをしています。“ちゃんとできるだろうか?”と不安を抱えながら始めた栄養指導でしたが、満足そうに笑顔で帰っていく母親が多く、少し安心しています。「ちゃんと成長しているよ」と子どもの成長を褒めた時の、母親のはにかんだ笑顔には、私が逆に元気をもらっています。そして、現地のボランティアに興味を持ってもらえたことが一番の喜びです。私の目標は「現地の人が自分たちで実践すること」であり、この目標に一歩近づけた気がします。目標を達成するためにはまだまだ越えなければならないハードルがたくさんありますが、この調子で一歩一歩進めていきたいです。

協力隊として残された時間はあと1年6カ月、長いようで、おそらくあっという間に過ぎて行くのだろうと思います。ザンビアで活動できるとても貴重な時間、一日一日を大切に、精一杯活動していきたいと思いますので、みなさん応援よろしくお願いします。

栄養指導を行う筆者。子どもが何を食べているのか?などをお母さんに現地語でインタビューしています。
栄養指導を行う筆者。子どもが何を食べているのか?などをお母さんに現地語でインタビューしています。
ムシリ保健センター。この日は予防接種。朝からたくさんの子どもが集まってきました。
ムシリ保健センター。この日は予防接種。朝からたくさんの子どもが集まってきました。
保健センターからGMPスポット(コミュニティの中でGMPを行っている場所)へ向かう道。市内中心部を少し外れると、のどかな風景が広がっています。
保健センターからGMPスポット(コミュニティの中でGMPを行っている場所)へ向かう道。市内中心部を少し外れると、のどかな風景が広がっています。
GMPスポットで、体重測定を行っている保健ボランティア(左)。子どもの成長の様子を記録し、低栄養の子どもの早期発見などにつなげます。
GMPスポットで、体重測定を行っている保健ボランティア(左)。子どもの成長の様子を記録し、低栄養の子どもの早期発見などにつなげます。
GMPスポットへ向かう途中で出会った子どもたち
GMPスポットへ向かう途中で出会った子どもたち