安心して水が飲めることの大切さ ~世界水の日に寄せて~ / 海外事業部 白幡利雄

2017/03/22
バングラデシュで一般的な手押しポンプ井戸
バングラデシュで一般的な手押しポンプ井戸
バングラデシュの首都ダッカ市内にあるスラムの水くみ場
バングラデシュの首都ダッカ市内にあるスラムの水くみ場
ラショー郡Lwai Taw村の水源の様子(左端は佐藤駐在員)
ラショー郡Lwai Taw村の水源の様子(左端は佐藤駐在員)

蛇口から出る水をそのまま飲めるのは普通のことじゃないんだ―――

そんな、当たり前のことを知ったのは、今からはるか30年ほど前、大学1年生の夏に家族でハワイ旅行へ行った時のことでした。これが私にとって初めての海外旅行。そしてその10年後、今度はNGOの駐在員としてバングラデシュで生活することになった私は、ハワイでは想像すらできなかった様々なことに直面しました。

毎年雨期には国土の三分の一が川の増水で水没する国のこと、水自体は豊富にあるものの、飲み水に関しては問題だらけだったのです。濁った池や川の水をそのまま飲んでいる村人。井戸の水なら大丈夫かと思いきや、トイレのそばに水受け場も整備せずに設置したため、汚染されているものが少なくないという現実。じゃあペットボトルの水はどうかといえば、これもその辺の水を入れて売られているものが結構出回っていたりして、本当に毎日、自分の飲み水を確保するだけでも一苦労でした。

さらに時は流れ、初めてバングラデシュに駐在してから14年後、今度は子ども2人を含む家族4人でネパールで生活する機会がありました。水の煮沸消毒やフィルターを使った浄水の作り方などは、もうお手の物。ところが、今度は肝心の水がないのです! 首都カトマンズは急激な人口増加によって勝手な地下水のくみ上げが相次ぎ、使えなくなる井戸が続出。水道管はつながっていても、水が出ない日の方が多い場所も珍しくありませんでした。少ない水でどうやって炊事、洗濯、トイレ、水浴びなどをこなしていくか、毎日頭を悩ますというのは、水が豊富なバングラデシュに慣れた身には、ある意味、新鮮な経験となりました。

そして今、私はAMDA-MINDSでミャンマーを担当しています。普段は岡山本部から現場の活動をサポートし、時々現地へ出張しているのですが、こちらの水事情はというと、バングラデシュとネパールを足して2で割った感じ、ということになるでしょうか。ミャンマーは水資源には恵まれていますが、国土が広く(日本の約1.8倍もあります)、地域によってかなり条件が異なります。つまり、水の豊富な地域とそうでない地域の格差が激しいということです。衛生的な水の大切さについても、知識がまだまだ普及していないという現実もあり、不衛生な水を原因とする病気の蔓延が今もあとを絶ちません。少数民族が多く生活することで知られるシャン州北部で行っている活動は、まさにこうした問題に焦点を当てたものですし、パウッ郡での活動も、衛生的な水が得られる環境でなければ進めることが難しいものです。

3月22日は「世界水の日」です。蛇口をひねる時、安心して水が飲めることの大切さについて、ちょっとだけ思いを馳せてみませんか?