AMDA社会開発機構 設立趣意書

今世紀、人類史上例のない豊かな社会が形成されつつある一方で、貧富格差は拡大の一途を辿っている。特に発展途上国においては、内外の政治的・経済的要因が大きな社会的変化を生み出し、その波は脆弱な生活基盤を揺さぶり破壊している。伝統的な価値観や規範もその波により侵食を受け、人々の健康と幸福を維持・増進するための社会基盤、装置、制度を守るための防波堤の再構築が急務となっている。

当法人は、AMDAグループの一員としてその行動理念を共有し、貧困と社会的疎外に苦しむ地域の人々を対象に中長期的な人道・社会開発支援を行い、その過程で得られた知見や経験を日本社会に還元したい。こうした双方向の国際協力活動を推進する中で、社会の復興や再建、開発分野における専門性を研き、組織のキャパシティーを高め発展させていきたい。

特に貧困に起因する社会の諸問題に焦点をあて、生活の基礎単位である家族の「今日の生活」の維持と「明日の希望」の実現が可能となるような生活環境を、住民自らが作り出すことができるよう支援と協力を行っていく。日本国憲法前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。(中略)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と謳われている。当法人は、日本発国際貢献の支柱を同前文の趣旨に求め、法人設立に際しその理念を踏襲し、これまでに培った多くの経験を基に、事業の裨益者を含めた内外の関係者と手を携え、人類に与えられた最も大きな試練とも言うべき貧困と、その他の社会的不条理に起因する様々な苦痛と悲しみの軽減に真摯に取り組むことを宣言する。